加瀬亮二さんインタビュー|どんな人の働く機会や生きる機会も大切にしたい
キャリアカウンセラーを軸に、20年以上、人材業界に携わってきた「加瀬 亮二」さん。現在は、自身で「仕事」をテーマとしたワークショップのデザインなども手がけるなど、人の人生の可能性を広げています。
そんな亮二さんには「どんな人の働く機会や生きる機会も大切にしたい」という願いがあります。
「どんな人の」というと、一見聞こえがいい言葉として終わってしまいがちですが、亮二さんの人生のステートメントからは、単なる綺麗事ではない「平和」を願う強い信念と、曖昧さを’’美しいモノ’’としてみる深い優しさを感じられました。
自分が大切にしている人生の物語が始まっていく感覚
あらためまして、今回のインタビューをさせていただく方は、加瀬亮二さん、通称「りょう」さんです。(以下りょうさんと呼びます。)
りょうさんは、20年以上キャリアカウンセラーとして人材会社・派遣会社に携わってきたキャリアのプロ。大学生などの働く側の人々から、採用側である千葉県の事業などにも関わってきた他、中小企業の採用に関わる自治体の施設のプロジェクトマネージャーを勤めるなど、経歴は多岐に渡っています。現在は、仕事を作っていくことをテーマに、人生の喜び・悲しみから自分の可能性を見出す「本当の仕事ワークショップ」を通じて、人の生き方・働き方の可能性を広げ続けています。
—— FINd YOUr COMPASsを受けてみて、りょうさんにとって’’コンパス’’とはどんなものですか?’’自分が大切にしている人生の物語が動き出すきっかになる’’ものだと感じています。1回作って終わりなのではなく、進化したり、変化したりするもの。マイコンパスを誰かに話したり聞いてもらうことで、何度でも命が吹き込まれるんですよね。人生の節目や転機に話すことで自分が大切にしてる物語(人生)が、再び動きだす。自分が大事にしているものが動き出すきっかけになるものである。そんな感じがしています。
りょうさんはマイコンパスを手元にして、「言葉だけでない体感覚を思い出すことで、自分が大事にしていること、自分が違和感を感じることが、再確認できる」とも語ってくれました。
「想像力で人とつながることができる」
「想像力で人と共にいられる」
そんなりょうさんの感性も同時に垣間見られた’’マイコンパス’’への話から、彼の人生のステートメントに移っていきましょう。
僕が僕であるために一人ひとりの美しい優しい物語を、ともにつくる
—— りょうさんにとって、このステートメントはどんなものですか?キャリアカウンセラーをしてきた中で、「あなたがあなたであるためには、誰かに勝ったりとか、あなた自身に勝ち続ける必要はなくて、あなたがただあなたで居続けてくれればいいんです。」そう言い続けてきました。それを自分にもちゃんと伝えたいという思いをこめています。
自分が人生の物語を語っている時、尾崎豊さんの「僕が僕であるために勝ち続けなければならない」という歌詞がずっと頭にリフレインしていました。あたらめて自分の人生を振り返ると、’’今日より明日の自分’’と、誰に勝つというよりも、自分に勝ちつづけたいという思いでやってきたなぁと気がついたんです。誰にも頼らずにひとりで頑張ってきたんだと感じた時に涙がでてきました。
一人ひとりの人生には、光も闇も両方あります。その両方ともに美しさが宿っていると話すりょうさんは、人と対話をしている時、その相手の目が輝く瞬間や、苦しみから言葉が紡がれていく場面に「その人の美しさ」を感じるのだそう。
人生の物語は生きる糧になるパワーがあり、かつ同時に変わりゆくもの。だからこそ、人生の物語を人と共につくっていきたいという願いがこめられています。
「僕が僕であるために」とは、自分自身や他者がそのままでいてほしいということ、そして良いことも悪いこともある一人ひとりの物語に寄り添っていきたいという想いがあるんですね。
そんな想いから生み出された「一人ひとりの美しい優しい物語を、ともにつくる」というステートメントからは、ひとりであっても共にいられるし、物理的に離れていても共にあれるという、りょうさんの’’人との関わり’’を表しているのだと感じました。
つながりは得る対象ではなく、思い出すもの
りょうさんの行動指針を紐解いていくなかで見えたきたもの、それは、人が忘れがちな身近にある幸せや大切なものや、人がネガティブを受け入れようとしない事柄に可能性を見出す姿勢です。
仲間と行った屋久島での体験で、心と身体がつながる、みんなとつながる、そして自分が幼い時に感じていた体感覚を思い出したことで、「つながりは得る対象ではなく、思い出すものだと気がついた。」と語ってくれたりょうさん。
そんな体験から、自分の中にある’’つながり’’は、特別な場所にいかなくても、日々の暮らしの中でも気づくことができると考え、日々の日常で大切にしてるそうです。
—— りょうさんにとって「つながり」はどうしてそんなに大事なのですか?1つは家族とのつながりがでてきますね。日々のなんてことない出来事を思い出すだけで、家族だったり、大事にしている人と再びつながりなおすことができるんですよね。
つながりを大切にしているりょうさんは、人との対話の中でもその特徴が表れています。
人との対話の中で、話を聞いていると’’痛みや嘆き’’に反応してしまう自分がいるんです。
’’痛みや嘆き’’からもすごく力が出ると感じているりょうさんは、自分や他者の’’痛みや嘆き’’を白黒つけずに、ただあるものとしてあっていいと言う。
「人生の痛みや嘆きと共にいる」ことで、「つながりを思い出す」ことができる感覚がある。そこから見えたものは、とことん人の心と向き合う優しい姿勢…!
ところが、話を聞いていくと、向き合うのは「心」だけでないようです。
りょうさんは、現代は「心」にフォーカスすることは多いけど、「身体」からフォーカスすることは少ないと感じているのだとか。
まずは身体を動かすことで体に熱を灯すことが、頭で考え続けるよりも、その人の火が灯りやすい。心だけだと辛いから、「身体と心に火を灯す」ことを大切にしています。身体や心がどんな状態なのか常に意識していて、これからもそうあり続けたいです。
「気持ちによりがちな時こそ、考えにつまったら、散歩したりサーフィンをしたり、日常で「身体」を動かすことを意識したい。」と話すりょうさん。そんな話の中でも、「それぞれみんな種火があって、それぞれの燃え方がある。」と、(あなたがあなたでいてほしい)という願いが言葉に表れていました。
世界を想像し、創造していく
「あわいな世界をを想像・創造する」という行動指針についても聞いていると、’’クリアな目標を立てて頑張っていくやり方だけじゃない’’、でもそんな時、’’優しさ・愛’’で自分を表現していけたらいいなと思っている’’という言葉が印象に残りました。
「あわい」とは「曖昧」であること。曖昧さがあると「はっきりしない自分はダメなんじゃないか?」そんな風に思うこともあったそうですが、今では「全部を明らかにすることが必ずしもいいとは限らない」「曖昧さがあっていい」という考えに変わっていったという。
あわいな世界があるからこそ、そこに対しての受け取り方や表現に自由が生まれていく。その世界を想像することで、世界が創造されていくという考え方には、なんとも言えない温かさを感じますね。
人は物ごとを常に2極で考えてしまいがちですが、そこに「あわいな世界」を見出すことも、これからの時代には必要なのかもしれません。
あいまいな垣根のない世界を想像していると、りょうさんの最後の行動指針である「平和の世界をわかちあう」とも繋がっていきます。
こどものころから’’平和’’という言葉に敏感だったというりょうさん。何かで区別されたり差別されたりする世界はなくなってほしいという願いが強く感じられます。
「キャリアカウンセリングや対話の活動は、自分の半径数メートルの平和な活動につながっているという実感を持ってやっている。」「自分のやっている活動が少しでも平和な世界に貢献できていたらいいなと思う。」そう最後に語ってくれました。
自分が大事にしている言葉があることで安心感がある
FINd YOUr COMPASsのプログラムの1泊2日の中では、お互いの物語を聞き合うプロセスが本当に良かった。人生のステートメントや行動指針を決めることで何か枠が定まってしまうんじゃないかと初めは思っていました。ですが、人に聞いてもらったり質問を受けながら話す過程で、言葉だけではない感覚的な部分でも自分が大事にしていた思い出や情景など、身体感覚で思い出すことができたのです。そこはとても特徴的だと感じています。
自分の行動指針を作る過程を、りょうさんはそう語ります。
また、作ったあとに時期を超えて人に話すことで、改めて自分が大事にしていることを再確認できるとも。りょうさんは、「自分が大事にしている言葉があることで安心感がある」と、マイコンパスと共にあることへの価値を、このように表現してくれました。
人生の物語には終わりがありません。自分がこれまでどんなことを大事に生きてきたのか、立ち止まることで’’今の自分’’を認識することができます。でも、それは物語の過程の1つにすぎなく、そこからまた人とつながり、自分とつながりながら、人生の物語が始まっていく。
自分の人生の物語を人に話すタイミングはいつだっていいし、何度でも話していいものなんだなと、りょうさんの言葉を聞いて改めて感じました。
「ゾウのように生きる」ー自分自身を表現すること
僕は「ゾウのように生きたい」そう思っているんです。
これからの夢を聞かれたりょうさんは、そう言います。ゾウのように生きるというのは、「ゾウの知恵を活かして生きる」という意味。
ゾウには「家族を大事にしている」「足の裏をつかって遠い仲間と対話し通じ合う」「歩いているだけで森が豊かになる」という側面がある他、「森にいるゾウは海にいるくじらと対話している」という研究結果もあることから、りょうさん自身が大切にしていることと大きく重なる部分があるのだそうです。
「ゾウの生態系には生き方としての知恵がたくさんあり、自分も同じように表現していきたい」そう語るりょうさん。
そんなりょうさんには、’’絵本を出版する’’という夢や、’’森や海で「人がその人として働く・生きる」場をつくる’’というビジョンがあります。そこから見えたものは自分自身を表現していきたいという想いです。
その根底には、対話を通じて、ともに一人ひとりの美しい物語、魔法のような瞬間、つながりを思い出すように生きていくことで、自分自身は「自分である」ことを表現し、そしてあなたには「あなたである」ことを表現していってほしい。そんな想いが込められているようでした。
まとめ
りょうさんの人生のステートメントや言葉を深掘りして改めて見えたものは、「その人がその人のまま生きることで、すべての人が自由に表現し合える世界」への実現です。
一人ひとりの本来あるべき姿を表現し合うことで、’’働く’’ことも’’生きる’’ことも成り立つ世の中へ貢献したい。そんな強い志を感じることができました。
「はっきりとした未来像を持って今の仕事に就いている人は少ない」「今ある偶然や好奇心といった、たまたまの重なりで今の仕事を選択している」とりょうさんも語ってくれたように、「やりたい仕事ではない」と思っている仕事さえも、振り返ってみれば’’自分の表現方法の1つ’’になっているということは私自身も体感しています。
最後には、’’自分をどのように表現して、「働く」と「生きる」を実現させていきますか?’’そんな問いを投げかけられたようにも感じます。
この機会をきっかけに、みなさんの中にも必ずある’’唯一無二の自分の表現方法’’を模索してみてはいがかでしょうか?
この記事を読んでくださったあなたが、自分の本来あるべき姿を表現することで、幸せに生きられるよう願っています。
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